RAM Series Project 

フランスの思想家、ロジェ・カイヨワは、瑪瑙、碧玉、亀甲石といった石の模様や形態を執拗に書き続け、「石のエクリチュール」を探求しました。彼は、神秘的な石の紋様を彼ら(石)自身が描いたものだと言います。石について記述するということは、同時に、彼ら(石)が人間とは異なる時間の感覚をもって成した表現を、人間が芸術表現として翻案することだとも言えるでしょう。

“私は、かつては流動状のものであったが、やがて冷却されてしまったひとつの溶岩を、一個の練り粉上のものをじっと凝視(みつ)めていたものだった。”  —— ロジェ・カイヨワ『アルペイオスの流れ』より

文芸は人間がこれまで綴ってきた文字や、言語からのみ成るものではありません。《石のエクリチュール》では、創作物を中心としたデジタルコンテンツを発信するメディアをつくります。月1、週1、隔月など、異なるタームを設定し、その時間軸に合わせた企画を立案します。編集チームで定期的に編集会議を開催し、研修生・フェロー・ゲストの記事を、特設ウェブサイト上で定期的に発信していきます。(青柳 菜摘)

青柳 菜摘(あおやぎ・なつみ)|アーティスト
1990年東京都生まれ。ある虫や身近な人、植物、景観に至るまであらゆるものの成長過程を観察する上で、記録メディアや固有の媒体に捉われずにいかに表現することが可能か。リサーチやフィールドワークを重ねながら、作者である自身の見ているものがそのまま表れているように経験させる手段と、観者がその不可能性に気づくことを主題として取り組んでいる。2014年東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修了。近年の活動に第10回恵比寿映像祭(東京都写真美術館, 2018)、オープン・スペース 2019(NTTインターコミュニケーション・センター [ICC], 2019)など。また書籍に『孵化日記 2011年5月』(thoasa, 2016)、小説『黒い土の時間』(自家版, 2017)がある。プラクティショナーコレクティヴであるコ本や honkbooks主宰。「だつお」というアーティスト名でも活動。
WEB|https://datsuo.com/
2019-08-10|