RAMメンバー16名の執筆陣による〈紀行文アンソロジー〉
『ボヤージュ・ボヤージュ・イン・ザ・ボックス、アシブミ、ハイケイ、メイビーあるいは、旅の領界』

RAM Associationでは、詩人のカニエ・ナハをRAMフェローに迎えて、2019年より《詩と言葉と本のワークショップ》を実施してきました。各回ごとに、現代詩、俳句、ダンス・パフォーマンス、遊歩、本といった主題を立て、芸術における言語表現をワークショップ形式で再考するプロジェクトとして、さまざまな作品や活動が生み出されました。
「トラベローグ(紀行文/紀行文学)」をテーマにしたアンソロジー・プロジェクトはその一つです。参加メンバーは1人1冊の本づくりを2020年1月から取り組み、ポスト・ドキュメンタリーという視座のもと、小説、詩、エッセイ、写真集など、それぞれのトラベローグ作品を手がけ、メディアとしての本づくりをデザイン監修の柳川智之のもとで探求してきました。
途中、コロナ禍のパンデミックを受けて中断せざるを得ませんでしたが、移動を困難にした未曾有の事態は、「トラベローグ」という意味の更新を迫り、プロジェクトに喫緊さを与えたことは疑いようもありません。ようやく完成した『ボヤージュ・ボヤージュ・イン・ザ・ボックス、アシブミ、ハイケイ、メイビーあるいは、旅の領界』は、こうした道行きを経て辿り着いた作家たちの同時代への応答でもあるのです。旅をどのように書き記すことができるか、各人各様の16作品20冊を3回配本にて発表していきます(第1弾は11月配本予定)。

和田信太郎[RAMディレクター]

旅をする、わたしたちは、あなたは、島へ、森へ、あるいは街角へ、病院へ、あるいは異国へ、宇宙へ―

旅の記録(トラベローグ)をすることは、もう一つの旅をすることかもしれず、たとえば、旅それ自体が豊かであればあるほど、それを記録することにより困難を覚える、といった経験をあなたもお持ちかもしれません。絶景を撮影した写真を見て、いや実際はこんなもんじゃなかった!と思ったことがあなたにもきっとあるはず。写真や映像として記録することがかつてよりずっと容易になった現在、どのような旅の記録(トラベローグ)がアクチュアルなものとして、また普遍的なものとして、未来へとその記録を生き生きと残していくことが可能でしょうか?

ここに集まった16人のメンバーが記したテキストは、<紀行文>という言葉で一応はくくることができるものの、ジャンルも、文体も、その目指すところもあまりにもまちまちで(日記があり、詩があり、小説があり、それらが組み合わさったものがあり、それらのどれでもないものがあり)、それはあたかも旅というもののあまりにも多様であること、そしてまた旅をする私たちひとりひとりがあまりにも多様であることを、物語っているかのようです。

そして、ここには純粋な読者というものは存在しません。なぜならば、この本の読者になるためには、あなたにもあなたの<紀行文>を、わたしたちに送っていただく必要があるからです。あなたの記した紀行文もまた、あなたからいったん離れ、ふたたびあなたのもとへと、旅をしてやってくるでしょう。もっと直接的にいうと、あなたの書いた<紀行文>も、やがて冊子になって送られてきます。これを「&U(アンド・ユー)」プロジェクトと名づけます。あなたもまた(&U)、私たちの旅のフェローである、ということです。

それではまた。Bon voyage!

カニエ・ナハ[RAMフェロー]

参加作家/配本予定本

青柳菜摘 『竹取山の煙』
朝倉千恵子『日々淡々とその日にそなえる』
Ad Mornings『#1_20200322』『#2_20200416』『#3_20200430』
石谷岳寛『息子と蛇とドラァグクイーン』
桂英史『イエイツの伝言』
カニエ・ナハ『コンタクトシート2020』
木村奈緒『隔たれた風景』
ジョイス・ラム『宮崎蜜月旅行』
Zoé Schellenbaum『ECLIPSE D’UNE ÎLE, TRANSPORTS DU LIEU-島の蝕、場所の遷り-』
髙橋由佳『青のくにへの旅』
Jang-Chi『トラベローグ人』
土本亜祐美『-ケンムン、アオノモリへ行く-』
長谷部友子『恋の墓場 ルアンパパーン』
万里『稀人来たりて、再び橋を架ける-川俣正「仙台インプログレス」をめぐる〈歓待〉について-』
吉田高尾『くるり日記』
李和晋『未来史』
&U

発行日:2020年11月
発行:RAM Association(東京藝術大学大学院映像研究科)

Director:カニエ・ナハ
Supervisor:和田信太郎
Design Supervisor:柳川智之

2020-09-26|