新しい都市の使い方

「都市を使う」「ライバルを絞る」「使い方を共有する」の3つのプログラムを通じて、都市の新たな使い方を探るプロジェクト。特に自分以外の人との接し方に変更を迫られた今年は、作家それぞれの立脚点から、公との関わり方の提案を目指しました。

メンバー:坂本裕司、ジョイス・ラム、トモトシ、山科晃一、吉田高尾

坂本裕司《 バリケード 》

映像(4チャンネル, 2021)

コロナウイルス流行以後、私たちは必死に口元を覆ってきた。外敵から身を守るために。誰かの外敵にならないために。身体が引き裂かれるような長期戦は、「日常」の振る舞いを忘れさせるほど激しい経験になりつつある。一枚のバリケードがようやく生活から消える日が来たとき、一体どんな「非日常」が待っているのだろうか。

ジョイス・ラム《 考口学 》

ドローイング, 映像(シングルチャンネル,3min, ループ, 2021)

1923年に発生した関東大震災の直後、今和次郎は東京のまちを歩きながら、当時の被災状況やまちの風景をスケッチで記録した。日常生活を観察し、採集することを通して同時代の社会現象や風俗を調査することを、彼は「考現学」だと呼んでいた。 2021年1月から3月まで、緊急事態宣言が再び発令された。私はどこか懐かしさを感じる、「今」の口元を採集してみた。

協力:田中彩

トモトシ《 ビクトリーネガティブロード 》

映像(シングルチャンネル, 8min, 2020)

2020年5月の中央線沿線では、コロナウイルス感染拡大が落ち着いたことからステイホームを解く人が急増していた。情報の錯綜や行政の迷走もあって、自ら判断をした人たちである。彼女/彼らのコロナに対する決断を称えるために、ぼくはビクトリーロードを設置した。

山科晃一《 花束のゆくえ 》

映像(シングルチャンネル, 10min, 2021)

都市の中に花束を置き、そのゆくえを見守る。
献花や供物の意を喚起させる花束によって予期せぬオブジェとの接続へと誘われる人々。
都市の無意識によって花束は位置付けらていくが、根を失った花に終着点はない。

吉田高尾《 Ideal Tourism 》

映像(マルチチャンネル, 10min, 2021)

栃木県にある東武ワールドスクウェアに行った時に撮影したプライベートムービーです。イデア的観光名所の縮小模型が集まったテーマパークの最後の展示物は「理想的な動物公園」でした。そこにある「理想」という言葉に「えっ」となったことが制作動機です。プライベートと、イデアの間で揺れ動きながら、「新しい都市の使い方」への縮小模型的な回答です。




坂本裕司
Yuji Sakamoto

福島県出身。ランドスケープやパフォーマンス撮影を中心に映像・写真・インスタレーションの制作を行う。近年は、リサーチした場所/土地に眠る記憶の古層を喚起する作品、日常の都市風景をズラすパフォーマンス作品を実験的に制作している。イメージ / サウンド / テキスト / ボディの有機的な再構成を模索中。イメージフォーラム映像研究所専科修了。

https://www.cinemusi.com/



ジョイス・ラム
Joyce Lam

香港生まれ。アートブック、雑誌の編集者としても活動している。香港、トロント、ロンドン、そして東京で暮らした経験から、「ホーム」という言葉の概念を常に変化し続ける流動的、多義的なものとして、ドキュメンタリー映像の制作を通して捉え直す。

www.joycetsin.com



トモトシ
Tomotoshi

1983年山口県生まれ、東京都在住。10年にわたって建築設計・都市計画に携わり、2014年より映像インスタレーション作品を発表。都市空間や公共ルールに歪みを生むアクションを行うことで制作している。西荻窪にTOMO都市美術館を企画運営。主な展覧会に「ヘルニア都市」(トモ都市美術館, 2020)「有酸素ナンパ」(埼玉県立近代美術館, 2019)、「あいちトリエンナーレ2019」(豊田市, 2019)がある。

http://tomotosi.com/



山科晃一
Koichi Yamashina


1991年兵庫県神戸市生まれ。テレビ局勤務後、2019年東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻修了。映像制作会社、広告制作会社を経て現在フリーランスとして映像/広告のディレクション及びシナリオを担当。ナラティブを通して役そのものと向き合い、資本と身体の関係性や、役の実存性、世阿弥の「幽玄」について追究。内面の言語化に徹した小説も執筆中。映画作品『ぎこちない太陽』『暗い部屋の記憶(撮影)』映像作品『預言獣』(MONSTER Exhibition 2020)小説作品『ファンタスティック逃避行』(SORARE AWARD優秀賞)

https://www.instagram.com/tannaru_hito/



吉田高尾
Takao Yoshida

1987年生まれ。岩手県出身。映像クリエイターとして、メキシコで行われている各種音楽フェスティバル等で配信されたMexiponの演奏の撮影編集を行なっている。また、シナリオライターとしても、ラジオドラマの執筆、短編映画の制作、演劇、パフォーマンスも行っている。

https://mobile.twitter.com/Square_Zappa


参加プログラム
>>>>《RAM PRACTICE 2021》EXHIBITION