《 1923旧中山道50km30時間を写す 》
インスタレーション(2021)
横浜と前橋を結ぶ線路は、繭を運ぶためにつくられたものだ。
1923年の関東大震災で、東京から埼玉へ、そして群馬に向かって「町送り」の末に殺された人たちは、「朝鮮人」であることを理由に電車に乗ることを許されなかった。彼らは捕らえられ、その線路を並行してはしる旧中山道をひたすら歩いた。
2020年5月、わたしはその道のりをなぞるように歩き、その先にたどり着けなかった群馬があることを想像した。繭ひとつで約1500mの糸が取れるというので、33個の繭をつなぎ、約50kmの道のりをサイアノタイプで写した。会場では繭を並び替え、ある青年が生き延びようと逃げていったルートと、夜明けを待てばたどり着けたかもしれない前橋までの道のりを示している。
●作品関連資料
【アーティストからアーツ前橋への手紙】今、どんなことを感じ、考えていますか。https://www.artsmaebashi.jp/?p=15433
三枝愛
Ai Mieda
1991年埼玉生まれ、京都拠点。「ものを残すための手立て/Leave them as they want」をテーマに作品制作と文化財修理に携わる。社会から選ばれないもの、残されないものを残すための手立てとして制作による保存行為を試みている。2017年「清流の国ぎふ芸術祭 Art Aword IN THE CUBE 2017」 O JUN賞。2020年アーツ前橋レジデンスアーティスト。2019年より、捩子ぴじん・島貫泰介と共に『アンティゴネー(仮)』制作に向けた、葬送儀礼・墓跡と大逆事件関連史跡リサーチと実践のプロジェクトを継続中。