《 私はその森から枯れ枝を盗んだ 》
インスタレーション(2021)
国立ハンセン病療養所の一つである多磨全生園は、東京の東村山市にある。当時、東京郊外の辺鄙で木々に覆われていたこの地区は、隔離施設を作るには「うってつけ」で、入所者自らが開墾して村を作りあげた。そして、戦争でほとんどの木が伐採されて更地にされ、それを幾度もの緑化計画のもと、植樹によって森を再生させたのが今の姿である。
物資の不足した戦後、生きるために枝を「盗伐」したことについて、いろいろな人が手記を残していることを知った。今の森で、私は枝を拾い、アトリエに持ち帰ることから作品は始まる。
映像撮影 : 早川純一
写真資料提供 : 国立ハンセン病資料館
参照テキスト : 多磨全生園患者自治会『倶会一処』『多磨』、柴田隆行著『多磨全生園・<ふるさと>の森』(社評論社)、同氏のHP上「森の年表」「随想・記録・論」
大和由佳
Yuka Yamato
美術家。杖や布、洗濯、食事、発話といった生活内の親密な道具やルーティンとなった行為を読みかえて、見る人の身体に送り返すようなインスタレーションや映像作品などを制作している。愛知県生まれ。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。