奄美フィールド・サーヴェイでは4つのコレクティヴを編成し、それぞれのコレクティヴの関心に基づいたフィールド・サーヴェイを行ないました。

一つ目のグループは笠利町エリアにて、奄美の風葬文化についてのリサーチ、笠利町に住むユタ・栄サダエ氏へのインタビューを行ないました。奄美ではすでに風葬の習慣はすでに失われつつあり、その背景には、本土の文化の流入と政治的な介入があります。それゆえに、墓地の場所も明確ではありません。奄美の女性祭祀・ノロの墓を探して海岸線を彷徨うなかで、出会った風景を記録しました。

二つ目のグループは喜瀬町・有良町・安木屋町をフィールドに、人間とは異なる存在の視点をテーマに、奄美の精霊ケンムンとケンムンが宿るとされるガジュマルについてリサーチを行ないました。地元の人にも知られていない、あるいは忘れられたガジュマルと出会うことを通じて、「外部」の人間がその土地の(忘れられた)聖なるものに身体的に触れ・関わることの意味と暴力性を考えました。

三つめのグループは国直にて、奄美の文学の朗読、集落(シマ)の地形図を踏まえた身体表現の開発といった実践を行うことを通じて、身体をメディアとした記録を試みました。また、名瀬の書店「奄美庵」の店主へのインタビューも行ない、彼のルーツからみえてくるイギリスと奄美の関わりについて聞き取りをしました。

四つめのグループは植民地主義や地政学の観点から、「国道58号線」に沿って北から南に縦断し、そこからみえてくる奄美の景色や音を記録しました。国道58号線は鹿児島市から奄美を貫き沖縄県那覇市に達する道路であり、「Route 58」という名称が観光グッズになるほど、奄美の主要な移動経路です。しかし、同時に奄美という土地に対する外部からの介入の歴史を象徴するものでもあります。

最終日には、各グループでのパフォーマンスの実演を芦花部の教会で行いました。リサーチの主題や契機を探ることを目的とし、一方で逡巡や疑問を互いに表明できる場でもありました。テーマを共有しつつも異なる関心を持ったメンバー間でディスカッションを重ねながら作品制作を試みるという今回の発表は、近年関心が高まる「コレクティヴ」というあり方を再考するものであり、かつ、収集されたマテリアルやファクトに対する芸術的応答を模索するものでした。

 

【開催概要】
日時 : 2019年11月13日[水] – 11月18日[月]
訪問先 : 笠利近辺, 喜瀬町, 有良町, 安木屋町, 名瀬, 国直, 国道58号線沿線 など

主催 : 東京藝術大学大学院映像研究科(RAM Association)
助成 : 2019年度文化庁「大学における文化芸術推進事業」

企画:Jang-Chi
運営:西本健吾
記録:澤本望
監修:和田信太郎

2019-11-30|