RAM Series Project 


RAMフェローの玄宇民(映像作家)が企画するプロジェクト《語りかたのエクササイズ》では、アイデンティティや社会問題、土地性といった主題に限らず、語りかたや語りのリズムと戯れることからも新たな映像ドキュメンタリーの可能性が生まれるはずであるという仮定のもと、様々な参照作品を参加者が持ち寄り「新しい語りかた」について議論する場を設けました。ある結論に到達することよりも、できるだけ多様な実例に触れ制作やリサーチにおける問題意識を深めることを目指し、2019年度は全12回にわたり以下のプログラムを実施しました。

A. 語りかた研究
「ロードムービー」「モノローグ」「インタヴュー」など一つの語りの枠組みを取り上げて、それにまつわる作品の実例を持ち寄り、その手法と効果を検討。

B. リサーチ・イン・プログレス
アーティストやキュレーターを招き、作品以上に豊かなものを含んでいる制作のプロセスを共有し、議論する会を開催。

C. 輪読会 
ポストドキュメンタリーにまつわる文献の輪読会。

D. 実作ワークショップ
上記の議論から発展して、「スライドショー」および「モノローグ」 をテーマにゲストを招いての実作・講評ワークショップを開催。

ポストドキュメンタリーのためのリソース集『99 RESOURCES』


本冊子では、RAM Associationにおける2019年度のプロジェクト《語りかたのエクササイズ》でのリサーチ発表や議論で取り上げた作品・書籍の中から99本をセレクトし、「99 RESOURCES」としてポスト・ドキュメンタリーに関連するリストを作成しました。網羅的でも正史的でもない、偏りをもったリソース集は、新たな実践のための手引きであり、ポストドキュメンタリーの地平を拡げることを企図して公開します。
リストに加えて、《語りかたのエクササイズ》で中心となったメンバーが作品をセレクトし、個別のレファレンスを加えた上で自身の問題意識や主題について振り返るエッセイを収録しています。《語りかたのエクササイズ》での議論を補助線にして、様々なバックグラウンドを持ったメンバーが表現活動の実践を通して得た気づきや思考について触れています。

これまでの開催プログラム


玄 宇民(げん・うみん)| 映像作家
1985年東京生まれ。生まれた地を離れた人々のありようと移動の記憶、マイグレーションをテーマに映像作品を制作。主な作品に『NO PLACE LIKE HOMELAND』(2011)、『OHAMANA』(2015)、『未完の旅路への旅』(2017)など。香港の離島、韓国の済州島から始まるプロジェクト『逃島記』を2018年より継続中。ソウル独立映画祭(韓国)、Taiwan International Video Art Exhibition(台湾)、ディアスポラ映画祭(韓国)などで作品上映。東京大学文学部美学芸術学専修卒業。東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻修士、同博士後期課程修了。WEB | http://vimeo.com/woominhyun

2020-01-02|